スタッフコラム

京都で家を建てる(16)地震への備えは大丈夫?〈知識編〉

地震に対して警戒心の薄い京都市民

1995年に兵庫県南部を襲った「阪神・淡路大震災」は、神戸市やその周辺地域、また淡路島地域に甚大な被害を及ぼしました。これらの地域の方々に比べると、京都に住まわれる方の地震に対する危機意識はかなり低いように思われます。また、これまでもおおむね100年から150年周期で発生しており、「近いうちに必ず発生する」と言われている「南海トラフ地震」についても、京都は津波被害が想定されている沿岸部からは離れているため、危険をさほど感じていないのが、京都に住まわれる方の実情ではないでしょうか。

今回と次回のコラムでは、京都で家を建てるにあたって、地震に対する心がまえや対策はどうすべきかについてご紹介したいと思います。前半である今回は、京都市エリアで発生が想定されている地震について知っていただく〈知識編〉です。

地震イメージ

地震には「海溝型地震」と「内陸地震」がある

地震を大きく分類すると、「海溝型地震」と「内陸地震」の2種類があります。海溝型地震は海底火山の活動によってできる「海洋プレート」と、大陸を形作る「大陸プレート」がぶつかって生じたひずみが戻ろうとするときに放出されるエネルギーでよって発生する地震です。2011年の東日本大震災や、今後の発生が想定されている南海トラフ地震がこれに相当します。

内陸地震は直下型地震とも呼ばれ、海溝型地震に比べると規模は小さく、また被害範囲も20キロメートルから30キロメートル程度と狭い範囲に限られますが、局地的には激震を起こし、また、都市直下の浅い活断層を震源とする場合には大きな被害をもたらすことになります。

京都市では、「海溝型地震」と「内陸地震」のいずれについても被害想定を行っています。海溝型地震である南海・東南海地震による震度は、市街地のほとんどが震度5強、伏見区,東山区,山科区および西京区の一部で震度6弱となります。また、この地震により全壊する建物は300棟、半壊も同じく300棟と想定されています。

一方、内陸地震の要因となる活断層は、京都市の直下および周辺を縦横に何本も走っています。

京都府の断層
(出典:京都府ホームページより)

これらの断層は過去に京都を襲った地震の発生源にもなっています。伏見城の天守閣が大破した1596年の「慶長伏見地震(マグニチュード7.5前後)」は、有馬ー高槻断層帯が発生源とされ、また、京都中心部で1000棟近くの町家が倒壊したとされる1662年の「寛文近江・若狭地震(マグニチュード7.5前後)は琵琶湖西岸断層帯が発生源といわれています。

「内陸地震」の危険度は4段階ある

活断層による内陸地震は海溝型地震とは違って周期的には発生しません。活動間隔が数千年空く場合もあります。だからといって安心して良いわけではありません。活断層による地震の危険度については地震発生の切迫度について調査を行い、危険度を以下の4つのランクに分けています。
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Sランク:地震発生の切迫度が3%以上
Aランク:同 0.1%以上3%未満
Zランク:同 0.1%未満
Xランク:データが少なく評価が困難
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現在、京都市周辺で最も危険な「Sランク」にリストアップされているのは、滋賀県にある「琵琶湖西岸断層帯」の一部区間と、京都府と奈良県にある「奈良盆地東縁断層帯」です。そして、たとえば琵琶湖西岸断層帯を起震断層とする地震の被害について、京都市は「建物の全壊28,700棟、半壊23,800棟、死者200〜800人」という想定を行っています。また、危険度こそ低いものの、左京区の下を串刺すように走る「花折断層帯」を起震断層とする地震の被害については、「市街地のかなり広範な地域で震度6強、左京区、東山区、北区、上京区、中京区、下京区、山科区の一部で震度7、建物の全壊117,800棟、半壊44,300棟、死者3,300〜5,400人」という凄まじい数字になっています。いずれも大変な被害ですが、地震発生の可能性がある以上、この数字から目をそむけられないのも事実です。

※上記以外の断層についても、京都市では被害想定を行っています。詳しくはホームページ「京都市情報館」の下記のページをご覧ください。
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京都市に大地震が起きたらどのくらいの被害が出るのだろう?
https://www.city.kyoto.lg.jp/gyozai/page/0000015489.html
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万が一の地震の時にも安全であるにはどうすればよいか?

仮にこれらの地震が発生したとしても、京都で暮らす私たちが大きな被害を被らないためにはどうすればよいでしょうか? これについては次回のコラム「地震への備えは大丈夫?〈対策編〉」にてご紹介したいと思います。