大切に住み継げる家づくりを

常務取締役 古川 亮太郎

中藏は創業112年を迎えた工務店です

私たち中藏は、明治43(1911)年に現在も本社のある中京区にて創業した左官業を発祥としています。その後、住宅に関わる事業を拡大しながら、昭和60(1985)年から工務店業務を本格化、平成23(2011)年からは、現代の住宅としての高性能と使いやすさに、京町家の伝統的な意匠を掛けわせた「現代京町家」の設計施工に本格着手しました。

町の景観を守っていきたい、
それが中藏の家づくり

直近10年で携わった新築と予算1,000万円を超える大型改修の案件数は、合わせて100件ほどになります。特に大型改修が多いのが当社の特徴といえます。その理由のひとつに「良いものはできるだけ長く残したい」という考えがあるからです。京都の歴史と文化が培ってきた美しい町並みは、一度壊してしまうと二度と元には戻りません。できるならば、耐震性能や断熱性能の向上を図りつつ、建物と景観を維持していきたいと考えています。

しかし、中には老朽化が進んでしまっており、安全やお住いになる方の健康面を考慮して建て替えをおすすめする場合もあります。そのような場合は、これまでのお宅があった町のたたずまいをなるべく壊さない外観の意匠を心がけるようにしています。

リフォームか? 建て替えか?
悩んだらご相談ください

そのようなことから、世帯主が代替わりなどされた際に「古い家をリフォームすべきか?、それともいっそのこと建て替えるべきか?」といったご相談をいただくことがよくあります。その場合は、まずご自宅を拝見させていただき、リフォームしたときと建て替えたときのメリットとデメリット、また想定されるそれぞれの費用などを総合的に判断し、どうすべきかをご提案させていただいております。これができるのは、古民家や京町家のリフォームから新築住宅まで、住宅建築を幅広く手掛けているからこそと考えています。

景観だけでなく、そこに育まれた文化を
大切にして「まちをつなぐ」

また、私たちは町並み景観と文化の継承を「まちをつなぐ」というキーワードのもとに大切にしています。古い京町家には、京都の気候風土や町の文化、人々の暮らし方を考えた様々な知恵が埋め込まれています。そのような先人の知恵を学び、現代の住宅に生かしていく技法を生み出すことについて、全員が高く意識を持つようにしています。

このことは、個人のお宅についても同様です。たとえ建て替えになったとしても、かつてのお住いの面影をどこかに残す。これも中藏の特徴です。以前のお宅で使っていた家具や建具、欄間を新しい和室に継承したり、眠っていた美術品に光をあてるなどです。代々住み継いできたお家の文化を次の世代にもつないでいくためのお手伝いを、家づくりという役割とともに行っていきたいと考えています。

I様邸施工事例

町家づくりの伝統的な
「わざをつなぐ」も大切にする

中藏のもうひとつのこだわりが「わざをつなぐ」ということです。京都の美しい町並みを残していく、あるいはたとえ建て替えになったとしても、かつてのたたずまいを蘇らすには、大工さんや職人さんの技術が継承されていることが前提となります。左官業からはじまった当社としては、特に「職人技」にこだわりを持っています。

さらに、職人さんの技術によって削り出された無垢材や左官壁の自然素材による質感は、工業製品にはない心が安まる空気感を醸し出してくれます。この住まい心地も、「わざ」とともに次世代へ引き継いでいきたいと考えています。

I様邸施工事例

「大切に住み継げる家が欲しい」にお応えします

以上のように、中藏の家づくりは「効率」だけを考えたものではありません。そのため、初期の建築コストがいくぶん高くなってしまうのは否めません。しかし、手入れをしながら長く大切に住み継いでいただくことで「数十年後には使いづらくなって建て替え」といったことがなく、長期的にはお得感のある家づくりになるとも考えています。また、長く住み継いでいただくために、定期点検やお手入れのアドバイス、また、社内にメンテナンスの専門部門を設けるなど、継続的にお客様のサポートを行っていけるのも中藏の特徴です。

「京都の町並みにしっくりと馴染む家を建てたい」「数世代にわたって住み継いでいけるような家づくりがしたい」とお考えの方に対して、中藏はさまざまなアドバイスができると考えています。みなさまのご相談をお待ちしています。

文:古川 亮太郎
株式会社 中藏 代表取締役/一級建築士
自室のインテリア図面を描いて遊ぶなど、幼い頃から建築やインテリアに興味を持ちながら育つ。京都市内の小・中・高校を経て京都工芸繊維大学へ進学、同大学院 造形科学研究科を卒業後は大手ゼネコンの設計部に入社して東京勤務に。
休暇で京都に帰省した際に、その町並みが変わっていく様子を目の当たりに。京都で建築の仕事をしたいと思い、実家の建築をしてもらった縁から株式会社中藏に入社。
2011年からは、住宅の新築事業に携わるとともに、京町家の改修を手掛けていく。2015年には京町家をリノベーションした旅館「藏や」をオープン。