スタッフコラム

京都で家を建てる(37)二世帯住宅づくり実践編〈二世住宅のトレンド〉

先月まで、3回にわたり「二世帯住宅づくりをするにあたってまず最初に考えるべきこと」についてご紹介をしてきました。

「お金」については、二世帯住宅ではそれぞれの世帯の建築費用や生活費、税金の負担、また、親世帯がいなくなった後の相続のことなど、単世帯以上に「お金」のことについてはしっかり考えておかなければ、親族間で禍根を残すことにつながりかねないこともご紹介をしました。また、「間取り」については、誰もが年齢を重ねるごとに運動機能などが低下していくことを前提に、間取りを考えておく必要性をご紹介しました。

これらにより、住まいづくりで避けては通れない「お金」や「間取り」のことについて、基本的なことを少しはご理解をいただけたかと思います。

さて今回は、いまの二世帯住宅はどのようになっているのか?を知っていただくために、「二世帯住宅のトレンド」として、アンケート調査の結果や、最新の二世帯住宅づくりの考えて方についてご紹介をしたいと思います。

最近に建てられた二世帯住宅の4割強が「部分共有型」

ご紹介をするのは、工務店向けの業務効率化システムを提供するエニワン株式会社が、3年ほど前におこなった、2018〜2019年の2年間に二世帯住宅を建てた人(その家族)1,097名を対象に調査したアンケート結果です。

二世帯住宅には大きく分けて「部分共有型」「完全共有(同居)型」「完全分離型」の3つのタイプがあることは、以前のコラムでもご紹介をしたかと思います。これが、どのような比率で建てられているかというと、下のグラフのようになります。

二世帯住宅のタイプを教えてください

「部分共有型(43.4%)」が最も多く、次いで、「完全共有(同居)型(31.3%)」「完全分離型(25.3%)」と続いています。

部分共有型を選ばれる最大の理由は「建築費」

「部分共有型」についてもう少し詳しく見てみましょう。部分共有にされた方の理由や、共有する部分については、以下のようになります。

部分共有について

部分共有の理由としては、建築費が抑えられることが多く、また、共有するのは、玄関や水まわりなど、設備機器にコストがかかる部分であることがわかります。

完全分離型を選ばれる最大の理由は、やはり「プライバシー」

では一方、完全分離型を採用された方の理由としては、以下のとおりです。

完全分離の理由

やはり「プライバシー確保のため(71.8%)」と回答された方が最も多いです。また、水道、光熱費の負担が曖昧になるのを避けたいという意向も見られます。さらに、このコラムでも以前にご紹介した、「完全分離型による税金の軽減」を念頭に理由にされたかたも少なからずおられるようです。

やはり、二世帯住宅での生活において、世帯間のプライバシー確保はかなり大きな判断要素となるようです。実際、このアンケートでの自由回答でも「二世帯住宅の後悔ポイント」として、

「プライベート空間があまりなく、たまにストレス…」
「お風呂を共有しているため入りたい時間に入れないことがある」
「嫁姑問題が最悪な時は居心地が悪い」
「夫婦喧嘩が聞こえて気を遣ってしまう」

といった、世帯間のプライバシーに関わるものが、多く寄せられています。

二世帯間の関係や親密さについては、ご家庭ごとにそれぞれ異なるかと思います。また、親世帯と子世帯がそれぞれ考えている二世帯暮らしのイメージも、微妙に食い違っているかもしれません。二世帯住宅をお考えになられる際には、二世帯での暮らしをしっかりシミュレーションし、また、二世帯間で十分に話し合うことが必要といえます。

二世帯住宅の60%はハウスメーカーで建てられている

さて、この調査では、二世帯住宅はどこで建てられているかについてのアンケートもあります。以下のとおりです。

二世帯住宅をどこで建てた?

ハウスメーカーで建てられた方が6割を占めます。理由としては、いくつかが考えられます。まず、「大きな会社」であることの信頼感。特に親世帯は大企業に対する信頼度が高いのが一般的です。そのため、「どこで建てるか?」を二世帯間で話し合ったとき、親世帯の意見を尊重するとハウスメーカーに依頼する流れになるのではないでしょうか。

次に、ホームページのコンテンツや資料請求をすると送ってもらえるカタログなどで、二世帯住宅商品紹介やプラン例が充実していることです。あらかじめタイプ別に規格化されたプランがあることで、お客様にとっては視覚的にわかりやすく、自分たちの暮らしをイメージしやすくなることにつながります。また、およその価格イメージも把握しやすいのも理由のひとつかもしれません。そして、地域工務店がこれだけ充実した商品ラインナップをあらかじめ揃えるのは正直言って難しく、太刀打ちできない部分であることは否めません。

最新の二世帯住宅トレンド

さらに、ハウスメーカーには、二世帯住宅について専門的に調査・企画をおこなうスタッフも揃っており、また、着工棟数も多いので、さまざまなデータが集まり分析することが可能です。それらをベースに「いまの暮らし」に適した二世帯住宅提案を毎年おこなっていることも、お客様から選ばれるポイントなのかもしれません。

そのようなハウスメーカーの新しい提案をいくつかの例を紹介しましょう。例えば、「複数のリビングルームを持つ部分共有型」。リビングルームは1棟にひとつという概念を外し、家族が集まるリビングと、世帯それぞれのプライベートリビングを設けます。これにより、二世帯が一緒の時間も、個々の時間も快適なシェアライフの実現を目指します。

また、玄関も別々な「完全分離型」ではあるが、それぞれのリビングからテラスを張り出すことで、互いの世帯からは行き来できないが(できると完全分離ではなくなるので)、会話ができる工夫をした、「おとなり感覚」の二世帯住宅などもあります。やはり、ポイントは二世帯間の距離感を絶妙に保つことにあるのではないでしょうか。

工務店も負けてはいられない

大企業の信頼感や、豊富な二世帯住宅商品ラインナップなどに対し、一工務店が立ち向かうのは難しいものです。しかし、前述した「いまの暮らしに適した二世帯住宅提案」については、我々なりに考え行動できるものであると考えています。さらに、京都という地域特性や、個々のご家族のご事情へのより綿密な対応はハウスメーカーには難しく、地域工務店ならではの提案ができるものと考えています。

社会動向としての二世帯住宅のトレンドに常に気を配り取り込んでいきながら、お客様の個別ニーズにも可能な限り対応をしていく。中藏はこのような複眼的な視点で、お客様ごとに最適な二世帯住宅のご提案をしていきたいと考えています。