スタッフコラム

京都で家を建てる(36)二世帯住宅づくり実践編〈まず最初に考えること(3)20年後のこと〉

時間経過イメージ

先々月、先月の2回のコラムでは、二世帯住宅づくりをするにあたってまず最初に考えるべきこととして、相続や資金計画など主に「お金」のことについて述べてきました。
今回のコラムでは、これらと同じく、最初に考えておくべき「間取りや設備」についてご紹介をしたいと思います。

二世帯住宅は時間とともに変化をしていく

二世帯住宅づくりを考え始めたとき、親世帯が65歳、子世帯が35歳、そして孫が5歳と0歳だとしましょう。子世帯は子育てに忙しく、親世帯も、まだまだ元気な頃だと思います。

これが20年後には、子世帯も自分の定年や老後などが気になってくる年齢となっています。一方で親世帯は85歳となり、足腰の衰えが徐々に目立つようになってきます。また、孫は就職や進学で家を離れてしまっている可能性が高いといえます。

このように、世代の異なる家族が暮らす二世帯住宅では、複層的に生活の変化が生じていくことを前提に、将来を考えておくことが必要となってきます。そのため、15年後、20年後、30年後…、ご家族の生活をイメージした間取りや設備をあらかじめ想定しておくことが大切です。

身体的な衰えへの考慮はマスト

二世帯住宅づくりを考え始めたまだ元気な時点で、将来、体力や足腰の筋力が衰えて移動するのが難しくなる自身の姿について、正面切って考えたくないという親世帯のお気持ちはわかります。また、親世帯から切り出さなければ、子世帯としても提案しづらい雰囲気があるのではないでしょうか。

しかし、遅かれ早かれ、体力や足腰の筋力の衰えは必ずきます。親子同居世帯の7割以上が介護を経験しているとのデータもありますから、目を背けること無く、家づくりに介護のことをあらかじめ織り込んでおくことが、結局は将来にわたり快適に暮らしていけることにつながります。
では、「織り込んでおく」とは、具体的にどのようなことをすれば良いのでしょうか。

まずは、動線と移動手段を考える

親世帯の居室を起点に、生活動線を考えてみましょう。まず必要となってくるのは、トイレや浴室・洗面への動線です。次に必要になってくるのが、二世帯が集まるリビングルームなどへの動線です。最後に考慮しておきたいのが、庭への動線や外出時の玄関から屋外への動線です。

これらの動線については、優先順位をつけて、居室からの距離をできるだけ短くしておくことが好ましいです。また、つまづいたり転んだりする恐れがあるので、段差などは設けないことも大切です。

次に移動手段を考えます。足腰が弱ってきて、「伝い歩き」が必要になってくると、手すりの取り付けなどが必要になってきます。さらに弱ってくると、車椅子による移動も考えなければなりません。

将来、手すりを取り付けることが考えられる箇所には、あらかじめ強度のある「下地」を備えておき、ビスを効かせられるようにしておくことが必要です。また、車椅子の導線となる通路には、段差を設けないことはもちろん、車椅子で通れる、また曲がれる幅も必要になってきます。

ただし、すべての通路の幅を広くとってしまうことは、必然的に居室部分を狭くすることになりますから、いかに効率的な動線設定をするかが、間取りの良し悪しになってきます。

室内の移動に比べると利用頻度は少ないかもしれませんが、同様に考えておくべきことが、庭や屋外への動線です。近年、基礎を高くすることにより床下の通気を良くすることで、腐朽やシロアリの被害を予防することがあります。また、近年増えつつある大雨の内水氾濫による建物の浸水も、基礎を高くすることで回避できる可能性が高くなります。

その一方で、道路から玄関へのアプローチ、また、リビングから庭へのアクセスには相応の高低差が生じるため、必然的に階段を設けることになります。足腰の機能に問題が無いときには、何の支障も無い階段も、いったん歩行器や車椅子の暮らしになると大きな障害となります。ただでさえ外出が減る高齢者にとって、さらに外に出づらい環境となってしまうのです。

これを回避するためには、「スロープ」を設けることが最善といえます。新築時から階段と併設しておくのも良いですし、足腰に不安を抱えるようになった時点で、改修工事を行なうことも考えられます。

車椅子に適した勾配

なお、車椅子で利用するスロープの勾配は、1/12(傾斜角度約5°)以下が望ましく、特に屋外だと1/15(傾斜角度約4°)以下が望ましいといわれています。したがって、一般的な基礎の高さ40センチに対して1/15の勾配(150センチ進んで10センチ上がる)でスロープを設置しようとすると、長さ6メートルのスロープが必要となります。さらに、高さ1メートルの高基礎の家ならば、実に15メートルのスロープを設置することになります。

床下の換気や水害のリスク低減と、将来の暮らしやすさの折り合いをどう取るか?これも、あらかじめ設計士と十分に相談すべきことになります。

訪問介護を想定した間取りにする

高齢になってもできるだけ自宅で生活し、必要に応じて訪問介護サービスを利用することを希望される方も多くいらっしゃいます。特に、子世帯と同居している方は、その割合がより大きいのではないでしょうか。

そのため、家の間取りは訪問介護サービスを受けやすいようにしておくことも大切です。まず、居室を玄関の近くにすることで、ヘルパーさんが出入りしやすくなります。また、デイサービスの利用や通院などで外出をするときにも助かります。設備としては、介護サービスに伴って手を洗うなどの必要性があるため、居室内や居室に隣接して洗面台を設けておくと便利です。

「空いた後」も考えておく

親世帯の生活スペースは、いつかは「空く」ことになります。その時のことも考えておく必要があります。

孫が世帯を持ったタイミングで親世帯がいた場所に子世帯が移り、再び二世帯が同居ということも考えられますが、必ずしもそうなるとは限りません。できれば、単世帯になったときのことを想定しておくのが良いかもしれません。

都市部で交通の便がよく、建築的に分離しているならば、空いた部分を賃貸にすることも考えられます。また、共用型であってもリノベーションをすることで、建物の一部を店舗として貸し出すことも考えられます。

一方、郊外の住宅地などで賃貸の需要が望めないのであれば、単世帯で生活を続けることになります。しかし、大きすぎる家だと空間を持て余してしまいますし、掃除やメンテナンスも大変です。また、光熱費や固定資産税も必要以上に支払うことになります。このような問題を抱えないためには、新築時にむやみに大きな住宅にせず、必要十分な広さにとどめておくことも大切です。

二世帯住宅づくりは家族の将来像を考える

以上のように、二世帯住宅づくりは「15年後、20年後、30年後に家族がどうなっているか」の将来像を描きながら、そのときに必要になってくるであろう間取りや設備をあらかじめ織り込んでいくことになります。しかし、家族構成やご事情、健康状態などはそれぞれですから、「これを真似すれば完璧」という成功パターンも無いのが難しいところです。

その点、中藏はこれまで多くの二世帯住宅づくりをお手伝いしてきた経験から、ご家族の将来像をお客様と描きながら最善の方法をアドバイスできると考えています。20年後、30年後に「しまった!」とならないよう、「親と一緒に暮らす二世帯住宅を」とお考えになられたら、まずは中藏にご相談ください。