建築事例

S様邸_正面

光の家、集える庭木造/3階/SE構法

「現代京町家」と呼ぶにふさわしい風情の家です。左官壁や格子などその外観からは町家ならではの気品が漂い、新築ながら、町並みに美しくとけこむ佇まいです。一方で、一歩中へ足を踏み入れると、従来の町家の印象をくつがえすうれしい驚きが待っています。暗い、寒い、ガマン、とは無縁なあたたかい光に満ちています。Sさんご夫妻は共働き、そして元気なお子さんたち。活動的なイマドキの暮らしです。

奥行きのあるひさしは風雨除けにもなる京町家の知恵。格子窓なども含め、和の意匠が京の町並みにしっくりと調和するよう設計しております。
御影石の敷かれた通り庭。家の内側から感じる明るさに導かれるように、玄関へ向かいます。
玄関横には、瓦製の鍾馗(しょうき)さん。町家の屋根に置かれていることが多い厄除けの神様です。京都の伝統を大切にしたいというご希望もあり、出入りのたびに目がいくこの場所に鍾馗さんの居場所を設けました。ここで、家族をしっかりと見守ってくれています。
玄関を入ると、視界がパッと大きく高くひらけます。そこには、坪庭…と呼ぶには広い庭が。きもちいい青空が見えます。
お子さんが遊べて、大人も気軽に外でリラックスタイムを過ごせる「集える庭」として設計されました。この庭を囲むように建つ家ですので、すべてのフロアの部屋、廊下、どこからでも緑が見えます。
玄関を上がるとすぐにキッチンとリビングダイニングの空間が。おでかけや帰宅の際に家族が顔をあわせ、声をかけあう機会も自然に増えます。
共働きのご家庭は、とくに朝のしたくが慌ただしいもの。キッチンの広々とした作業スペースが家族のお手伝いをスムーズにしてくれます。
作業台の高さ、収納スペースなどについても奥さまと綿密にうちあわせを重ねました。段取りよく効率的に使えるキッチン。「じゃあ、もう1品!」きもちにも余裕が生まれます。
ゆったりとくつろぐにもお友だちを招くにも、大活躍の場となりそうなリビングダイニング。大きな窓から光がふりそそぎます。
1階には、ちょっとスペシャルなもう一部屋。和モダンな雰囲気の応接の間。お迎えしたお客さまを庭から直接お通しできます。インテリアの工夫次第で、さまざまな表情を楽しめるお部屋です。
町中にあって貴重な、静かな空間です。ツガの木目が美しいフローリングなど細部にまでわたる緻密さ、精巧さ。中藏が培ってきた技の数々を感じていただけることと思います。
壁は当社お得意の左官仕上げです。暖かい質感は光があたることで、更に素敵な表情を見せてくれます。
階段も、ご家族のリクエストにお応えして。パッと見た目にも「あ、ゆるやか」という安心感。上り下りしてみると「これはラク」と実感できます。将来、二世帯住居となることも見据えてのやさしい設計が随所に見られます。
畳敷きの和室。お子さんが小さいうちは家族みんなの寝室として。ぽかぽかとした日だまりでお昼寝にもよさそうです。
それぞれのペースや自分だけの時間を大切にしながらもお互いの気配を感じられることが、中庭を囲んで建つこの家の特長となっています。
2階のデッキは、檜のうっすらとしたピンク色がやさしい印象。家族の成長とともに、味わいのある風合いへと変化していくのも木の家の楽しみのひとつです。リラックスチェアやハンモックなどが似合うようなスペース。
表からは2階建てに見えますが、実は3階建て。ご主人の書斎となっています。大学で研究をされているお仕事柄、たくさんの書籍を収納できるよう作りつけの本棚をリクエストされました。
仕事の合間には、本棚で仕切られたとなりの空間でほっとリラックス。ミニキッチンも完備。仕事のうちあわせなどにも活用できるスペースになりました。
広いデッキに出ると、町家の瓦の波が続く京都らしい景色。「夏には、ここでビールを飲みながら…」と、ふだんはあまりお酒を嗜まれないご主人も新しい暮らしへのイメージが湧いてくるようです。
「京都らしさ」を生かしながらのイマドキの家族にうれしい快適さ。世代をこえて長く住み継げるしっかりと丁寧なつくり。光に満ちたこの家では日が暮れてからもなお、やわらかな灯りが庭と、そして、ご家族の笑顔をあたたかく包んでいました。