スタッフコラム

京都で家を建てる(19)京都の冬の寒さに備えよう〈設備編〉

前回のコラムでは、人が寒さを感じる仕組みと家の断熱の重要性についてご説明しました。ただ、いくら高断熱高気仕様の建築にしたとしても、暖房器具なしで冬の寒さを乗り切るのは難しいものです。今回は、暖房器具選び方についてご紹介したいと思います。

暖房器具はエアコン一択

結論から言うと、暖房器具はエアコンがベストです。その理由は「燃費」と「空気の質」にあります。

まず、燃費についてみてみましょう。暖房に使用するエネルギーは電気・ガス・灯油の3つが一般的です。これらは、いずれも「熱力学第一法則」によって、一定単位における熱量(kcal)=得られる暖かさが決まっています。仮に、電気料金を1kWhあたり25円、都市ガスを1立方メートルあたり150円、灯油1缶(18リットル)を1800円としたとき、それぞれの「1円あたり」で得られる熱量は以下となります。
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・電気1円あたり:36kcal
・都市ガス1円あたり:70kcal
・灯油1円あたり:88kcal
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この数字だけで考えるなら、灯油による暖房が最も燃費が良いことになります。ただし、電気の「1円あたり36kcal」は、電気ストーブやこたつなど、電気をそのまま熱量に変換したときの数値です。同じ電気で動く暖房器具でも、エアコンは「ヒートポンプ技術」により、エネルギー効率を4倍近くまで(機種によって異なります)高めることができるのです。つまり、理論上ではエアコンに限り、電気1円あたり36×4=144kcal分の熱量が得られる計算になるのです。これがエアコンがベストの理由です。
冬の暖房は暖房器具はエアコン一択

エアコンは空気を汚さないというメリットも

暖房器具としてエアコンがベストな理由がもうひとつあります。それは「空気の質」です。石油ストーブやガスファンヒーターはまだ多くの家庭で使われています。しかし、それらの致命的な欠点は「空気が汚れる」ということです。要は、家の中で焚き火をしているようなものですから、室内の酸素を消費し二酸化炭素を発生します。これは人体にとって良いものとはいえません。石油ストーブやガスファンヒーターは、家の隙間が多く、気密性能が低かった時代の暖房器具であり、高気密高断熱仕様の住宅には適さないと考えるべきです。

それでも、燃焼式の暖房器具にこだわるのであれば、「FF式ストーブ」をおすすめします。FF式ストーブは、北海道や東北などの寒冷地で普及しているストーブです。燃焼用の空気を室外から強制的に取り入れ、排気は給排気筒を通して室外に出す方式なので、室内の空気を汚しません。ただし、FF式ストーブは壁を貫通するダクトで外とつながっているため、夏でも片付けることができません。そのような理由から、関西ではあまり普及していません。

一方、寒冷地でFF式ストーブが普及している理由は、エアコンの特性にあります。外気温が低すぎるとエアコンのヒートポンプの効率がパワーダウンしてしまうからです。ただし、この心配は北海道などの寒冷地においてのみ。京都においては十分にヒートポンプの効果を発揮してくれますので、ご心配なく。

エアコンの設置にはコツがある

さて、いくらエネルギー効率に優れたエアコンでも、設置の仕方や使い方によっては不快さを感じたり電気代がかかってしまったりするので注意が必要です。

エアコンの暖房でよくある不満は「足元が寒い」ということ。これには、2つの理由があります。ひとつは、床の断熱性能が低いため。もうひとつは、エアコンをつけたり消したりするためです。エアコンを消すと、窓際などで冷やされた温度の低い空気が徐々に床面に溜まってくるのです。解決策としては、まず家全体を高気密高断熱仕様にすること。その上でエアコンを24時間連続運転すると、部屋全体が均一な温度となり、足元の寒さを感じなくなります。さらに、シーリングファンやサーキュレーターなどで部屋全体の空気をかき混ぜることで、部屋の上下間の温度差はより小さくなります。

「エアコン24時間運転は、電気代が心配」という方もいらっしゃいますが、エアコンが電気を最も消費するのは立ち上がりの段階。いったん一定の温度に達すると、消費する電力は少なくなります。つまり、つけたり消したりを繰り返すほうが、電力の消費量がかえって増えてしまうのです。ただし、南面に面して十分な開口があり、日中は陽射しだけで暖かい部屋においては、無理に連続運転をする必要はありません。日が暮れて、まだ暖かさの残っているうちにエアコンをONにすれば大丈夫です。

さらに、近年では「床下エアコン」といって、床下と基礎の間の空間にエアコンの温風を送り込むことによって、より効果的に床面から部屋を暖める方法も普及しています。一見ベストの手法に思えますが、これには注意が必要です。基礎の形状によっては温風が届かない場所が生じる可能性があるため、建物のプランとの関係性が重要になってくるのです。普通の壁掛けエアコンでの暖気の行き渡らせ方に比べ、より高度な検討が必要であるといえます。

また、建物プランは、エアコンの設置台数にも影響してきます。完全に閉じた部屋をたくさんつくり、各々の部屋にエアコンを設置していては、いくら高効率のエアコンといえども台数がかさめば相応の電気代となってしまいます。消費電力を抑えるために少ない台数のエアコンでつくった暖気を家全体に行き渡らせるには、「家全体がつながった空間」にするプランづくりが必要になってきます。

エアコンの最適設置はプランの段階から考える

このように、いくつかの点に注意すれば、エアコンは最強の暖房器具といえます。特に、建物を高気密高断熱することで、その特性をさらに享受することができるといえるでしょう。しかし、住宅において冷暖房は不可欠な設備にもかかわらず、その配置については意外と後付けで考えることが多くなりがちです。

これから家づくりをご検討される方におかれては、間取りを考える基本設計の段階からエアコンの設置位置を織り込んで検討されることを、中藏ではおすすめしています。これにより、家全体の温度差の少ない快適な暮らしと、設置台数を少なくするで初期の建築コスト、また月々の電気代、さらに将来の買い替えのコストを抑えることができるメリットがあることを、ぜひ覚えておいてください。