スタッフコラム

京都で家を建てる(15)水害は事前の備えで回避できる

近年、集中豪雨や台風などによる大規模な水害が日本のどこかで毎年発生しています。これは京都市も例外ではありません。2013年9月16日の台風18号では、48時間雨量が300ミリ近くに達し、桂川が嵐山付近で氾濫。右京区と西京区で300戸が床上・床下浸水しました。また、山科区や伏見区、亀岡市、南丹市でも浸水被害が発生しました。
「水害は起こるもの」という前提のもとで家づくりを考えることが大切であるとお考えください。

ただし、いつどこで発生するかわからない地震とは異なり、水害はある程度の想定をすることができるのが特徴です。このコラムでは、「土地を購入する時」「家を建てる時」「水害が発生したら」「水害に被災してしまったら」の4つの状況において、水害への対策を考えてみたいと思います。
水害は事前の備えで回避できる

土地を購入する時

購入を検討している土地があれば、「水害ハザードマップ」で浸水の危険度を確認してください。近年発生した水害では、事前にハザードマップで予測された被害想定とほぼ同じエリアが被災しています。それだけハザードマップの想定は正確だということです。京都市のハザードマップは、ホームページで閲覧することが可能です。また、京都市のホームページでは平成19年以降の浸水被害の履歴を住所の町丁目単位で公表しています。
これらで浸水すると判定された、あるいは浸水履歴のある土地は、再び浸水する可能性が高いといえます。「価格が安いから」「環境がいいから」は土地購入の大きな基準ですが、「水害の想定」もぜひ購入基準のひとつとしてください。また、さまざまな事情から、あえて浸水が予想されるエリアで家を建てる場合でも、あらかじめ水害の想定が頭に入っていれば、リスクを踏まえた家づくりをすることができます。

家を建てるとき

将来的に水害の被害が考えられるエリアで家づくりをするときは、「建築で水害対策をしておく」ことが安心と安全につながります。

基礎を高く作る

建物の基礎はコンクリートでできているので、浸水したとしても基礎の高さまでであれば、家の中への水の侵入は防ぐことができます。しかし、基礎の高さを超えて、基礎と土台の間にある「基礎パッキン」と呼ばれる通気層に達すると、そこから水が侵入してきてしまいます。したがって、「基礎を高くする」ことが浸水対策としては有効です。場合によっては、1階をコンクリート製の車庫にして2階以上を居住スペースにする、いわゆる「高床式」にすることで浸水を回避することができます。

壁で囲む

防水性のある強固な壁で家を囲んでしまいます。建物の高さ制限があり「高床式」の建築ができないエリアでは有効な手立てです。出入り口部分は普段は開放しておきますが、水害発生時には止水板や土のうを使ってブロックするようにします。ただし、家全体を高さのある壁で囲んでしまうと、日常の採光や通風も遮ってしまうことが考えられます。壁を設ける際には、日照や通風シミュレーションを行い、日常の快適さが損なわれないようにすることも大切です。

浮力対策

木造住宅は比較的軽量です。また、高断熱高気密住宅はその名の通り気密性が高いので、風船のように水に浮かんで流されてしまいます。対策としては、建物が浮かばないように基礎と土台をしっかり結びつけておくことです。その点、中藏が採用しているSE構法は柱脚金物によって建物と基礎とを強固に固定しますので、浸水時はもちろん、地震時に柱が土台から抜けることも防ぎます。

設備機器は高い場所に設置する

エアコンの室外機やエコキュートなど、浸水すると故障してしまう設備機器は、できるだけ高い場所に設置するようにします。また、1階まで床上浸水が想定されるエリアで家づくりをする場合は、配電盤を2階に設置しておくことも考えられます。

浸水してしまったとしても復旧しやすい材料を使う

床材は無垢材で仕上げると洗浄することで元通りになるのに対し、合板材はふやけて再利用はできなくなります。また、壁の仕上げも無垢材や珪藻土仕上げにしておくと、比較的容易に復旧することができます。

水害が発生したら

天気予報などで水害の可能性が報じられたら、早め早めの対策をすることが大切です。避難場所や連絡方法について家族で話し合っておく、浸水の防止措置を行う、そして命を守る行動をとることです。これまで自治体の発令する避難に関する情報は「避難指示」と「避難勧告」の2つがありましたが、2021年5月から「避難勧告」が廃止され「避難指示」に一本化されました。「避難指示」が発令されたら、必ず避難しなければなりません。

水害に被災してしまったら

自然界では予測できないことが起こります。水の被害も同様です。十分な対策を講じていたとしても被災してしまう可能性はあります。復旧にはお金が必要になってきますが、これは火災保険の水災補償で賄われます。損害保険金の支払金額や条件は契約内容によって異なりますが、水災として認められる被害は、一般的に床上浸水したとき、あるいは再調達価額の30%以上の損害を受けたときと言われています。
また、保険金を受け取るためには被害状況がわかるように記録を残しておくことが大切です。いちばん簡単なのは写真を撮っておくこと。片付ける前に被害の様子がわかるように、また、浸水深や家の傾きがわかるようにメジャーや垂直がわかるものと一緒に建物の写真を撮っておきましょう。被災してしまうと気が動転してしまいますが、復旧を考えると重要なことです。

ほぼどこでも水害の危険性はある

京都市が作成しているハザードマップでは、洪水予報河川である宇治川、桂川、木津川下流、鴨川・高野川、また水位周知河川である弓削川、桂川(周山)、山科川、天神川、小畑川の洪水浸水想定区域図が示されています。これを見ると「洪水時に川沿いはほぼ危険」であることがわかります。さらに、ハザードマップではゲリラ豪雨などでマンホールから水があふれる内水氾濫は示されていませんから、それを含めるとほぼどこでも水害の危険性はある」といえるでしょう。
昨今の気象を考えると、水害は他人事ではないと言えます。家づくりを考えるときには地震に加えて水害に対する強さも考えておくことが大切です。