スタッフコラム

京都で家を建てる(27)暮らしのエネルギーについて考えてみる〈ためる工夫〉

これからの住まいづくりは家庭用蓄電池を設置すべきか?

近年、夏になると電力需要のひっ迫がさかんに報道されます。その対策として注目されているのが「家庭用蓄電池」。昼間に太陽光発電システムで作った電力を家庭に設置した蓄電池に蓄え、夜間に放電させることで家庭で使う電力をまかなおうというものです。

実際、家庭用蓄電池の普及率は急速に高まっています。2018年がおよそ7万台、2019年が12万台、2020年が14万台が近年の販売台数となっています。そして、今後も販売台数は伸び続け、2025年には25万台、2030年には33万台になるとも推定されています。

この数字を見ると、これからの住まいづくりにおいては蓄電池を設置するのが一般化するように見えますが、はたしてどうでしょうか。今回は、コスト面から家庭用蓄電池を設置すべきかどうかについて考えてみます。

家庭用蓄電池とは

まず、家庭用蓄電池について、簡単にご紹介します。家庭用と呼ばれる蓄電池は「リチウムイオン蓄電池」です。ノートパソコンやスマートフォンに使われている蓄電池と原理的には同じです。容量は5kwhから15kwhです。一般家庭の夜間の電力使用量はおよそ8kwですから、10kw程度の蓄電池を日中に太陽光発電システムでフル充電すれば、電力会社から電気を買うことなく蓄電池の電力だけで生活することができる計算になります。

しかし、家庭用蓄電池の価格はまだ高価で、現在15〜20万円/kWhと言われてます。一戸建ての住宅では、設置費込みで平均で120万円前後となります。また、スマートフォンのバッテリーと同じように、家庭用蓄電池には寿命があります。設置から15年から20年を過ぎると、充電性能が低下していくと言われています。

つまり、家庭用蓄電池を設置するかどうかを検討する際には、太陽光発電システムの設置を検討する時と同じように、15年程度のスパンで考えた際のコスト比較をするべきです。

コストをざっくり計算してみる

それでは、太陽光発電システムと蓄電池を設置したとき/しないとき、電力会社に払う電気代はどのくらい違うのかを試算してみましょう。

モデルとなる家庭は、オール電化の一戸建てに暮らす4人家族。月当たりの電力使用量は平均的な460kwhで、毎月の電気代は15,000円。つまり、年間の電気代は180,000円です。さて、この家に平均的な4kwの太陽光発電パネルを設置し、5kwの蓄電池を設置したとしましょう。これについてのシミュレーションは、京セラ株式会社のWebサイトで計算できます。
https://www.kyocera.co.jp/solar/personal/simulation/

太陽光発電・蓄電システムシミュレーション

結果としては、年間でおよそ116,000円の電気料金を節約できます。しかし、太陽光発電システムと蓄電池とを合わせた設置費用は、国の補助金などを使ってもおよそ200万円、これを15年で割ると133,000円ですから、正直言って「蓄電池はお得になる」とは言えません。

このようなことから、家庭用蓄電池を製造しているメーカー、また扱っている工事会社は、「蓄電池の設置は家庭の光熱費を安くできる」とは言わず、主に「災害による停電時に安心」をセールストークにしているわけです。

V2Hという使い方を考えてみる

さて、近年急速に普及しているものと言えば、電気自動車(以下EV)です。EVも蓄電池を搭載しており、そこに蓄えられている電力を家庭用の電力に用いたり、逆に蓄電池に蓄えた電気をEVに充電することができます。

電気自動車イメージ

つまり、EVを「第二の家庭用蓄電池」と考えれば、より多くの電気を蓄えることができます。ちなみにEVの蓄電容量は、日産リーフで40kWh。家庭用蓄電池よりはるかに多くの電気を蓄えられます。また、太陽光発電システムからEVに充電するわけですから、燃料代は0円になります。月あたり1,000kmを走行する方であれば、およそ4,000円の燃料代の節約になります。なんとなく家計が助かりそうな予感がしますね。

それでは、もう一度京セラ株式会社のシミュレーターで計算してみましょう。蓄電池の容量を設定できる最大の15kwhにしてみると、、、。意外にも、年間でおよそ118,000円の電気料金が節約できると、家庭用蓄電池だけの時と結果はほとんど変わりません。EVの燃料代の節約分を加えても122,000円です。その理由は、太陽光発電パネルの発電量に限界があるからです。

太陽光発電・蓄電システムシミュレーション

仮に太陽光パネルを10kwhに変更、つまり発電量を多くすれば、年間の節電は211,000円と「3万円ほどお得」となります。ただし、その分、太陽光発電パネルの設置費用は高くなりますから、トータルで考えると結果は微妙なところですね。

太陽光発電・蓄電システムシミュレーション

つまり、お得になるかどうかは、「つくる電力」「ためる電力」「つかう電力」、そしてそのための機器の「設置コスト」のバランス次第であるというのが現状です。

ライフスタイルによってはおすすめな家庭用蓄電池

以上のように、今後の電気料金の上昇を加味していないとはいえ、現時点において「家庭用蓄電池はお得」と一概に言い切るには無理があります。ただし、将来的には太陽光設置パネルや家庭用蓄電池の設置費用が安くなると推測すると、結果的にお得になる可能性が高いと言えるでしょう。さらに、、より精度の高いシミュレーションや、エネルギーマネジメントシステムの導入により、効率的な電力の配分が実現でき、お得はよりアップすることも考えられます。

一方で、近年は自然災害の規模が甚大化しており、思いもよらぬ停電に巻き込まれる可能性もないとはいえません。停電になって照明が点かなかったりテレビが見られない程度であれば我慢できるかもしれません。しかし、オール電化で冷暖房が一切使えない、大切な食材を保存している冷蔵庫が停止してしまう、あるいは熱帯魚の水槽のポンプやヒーターが止まってしまうなどは、避けたいものです。そのような方には、非常用電源としての家庭用蓄電池の設置をおすすめします。上記シミュレーションの1〜2万円の差も、「保険料」と考えれば、検討の範囲かもしれません。

いずれにしても、太陽光発電システムと家庭用蓄電池、そしてEVを組み合わせた家庭内でのエネルギーマネジメント技術はまだ始まったばかりの状態です。中藏としては、最新の情報をキャッチし、今後もみなさまにわかりやすくご説明、また、導入のアドバイスをしていきたいと考えています。将来を見据えた省エネルギーな暮らし方については、ぜひ中藏にご相談ください。