スタッフコラム

京都で家を建てる(25)暮らしのエネルギーについて考えてみる〈使わない工夫〉

先の読めないエネルギー価格

日本のエネルギーのほとんどは海外の化石燃料に頼っていることを、多くの方がご存じかと思います。しかし、化石燃料の埋蔵量は有限であり、また、今後の世界情勢の中で安定して入手していけるかどうかも不透明です。そのため、自然の力を利用した太陽光発電や風力発電などの再生エネルギーに今は注目が集まっています。

風力発電イメージ

再生エネルギーは太陽の光や風を利用するため、海外から輸入する化石燃料に依存する必要がありません。また、発電の過程で二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーです。ただし、発電効率が火力や原子力に劣るため、そのコストがエネルギー価格に反映され、家庭の光熱費が大幅に値上がりすることも懸念されています。

そのような将来予測から、これからの住まいづくりや暮らしは、「できるだけエネルギーを使わない工夫」が求められると、私たちは考えています。

ただし、漠然としたイメージだけで「省エネ住宅」を建ててしまうのは少々お待ちください。今回のコラムでは、客観的なデータに基づきながら、優先して省エネすべきポイントや方法をご紹介します。

何をすれば省エネになるか

下のグラフは家庭における用途別エネルギー消費の割合を示したグラフです。

家庭における用途別エネルギー消費内訳

これを見ると、「冷暖房のためのエネルギー」「給湯や厨房のためのエネルギー」「照明や家電のためのエネルギー」が、ほぼ1/3ずつの割合になっていることがわかると思います。つまり「エネルギーを使わない工夫」とは、上記の3つに対して、エネルギー使用量を減らす工夫をバランス良く考えることです。

一方、一般的に「省エネ住宅」といわれている住宅は、躯体の断熱性能を高めることにより、暖冷房のエネルギー消費を抑えることのできる住宅のことです。つまり、家庭におけるエネルギー消費の1/3に関してのみ対策を考えた住宅であり、トータルで省エネであるとは必ずしも言えないわけです。

暖房のためのエネルギーを減らす工夫

一般的に、夏のエアコンが省エネの大敵のように思われがちですが、先のグラフでわかるとおり、冷房にかかるエネルギーはそれほど多くありません。どちらかというと、暖房に使うエネルギーの方が多いと言えます。

暖房に使うエネルギーを減らすためには、暖かい室内の空気を外に逃さないように、住宅躯体の断熱性能と気密性能を高めることがやはり最優先です。さらに、冬期の太陽光を窓からたっぷり取り込むことにより室内をポカポカとし、さらにその暖かさを夜間まで蓄える「パッシブデザイン」を設計手法に用いることも、省エネにとってプラスになります。

給湯や厨房のためのエネルギーを減らす工夫

給湯に用いるエネルギーを減らすには、エネルギー効率の良いガス給湯器や電気給湯器を設置するなどの選択肢があります。
なかでも注目したいのは、太陽熱利用の給湯システム。太陽の熱を使ってお湯を作ることでエネルギーの使用量を削減できるというものです。一時期、強引な販売手法で売られていた商品のため良いイメージをお持ちでない方もいらっしゃいますが、性能や使いやすさは当時より格段に向上しており、検討してみる価値はじゅうぶんにあります。

照明や家電のためのエネルギーを減らす工夫

家電が消費するエネルギーを減らすのは、現実的にはなかなか難しいものです。家電製品を省エネタイプに買い変えたり、こまめにスイッチをON/OFFする程度しか思いつきません。その中で建築的に解決できるのが、先に述べたパッシブデザインによる昼光利用です。パッシブデザインは、太陽の光や自然の風を有効利用する設計手法です。自然光利用を考えたプランや窓の効果的な配置により、昼間に照明を必要とする場所を少なくすることができます。

また、「照明」という視点で考えれば、夜は照明の位置を低くしたり間接照明を効果的に使うなどの暮らし方をすることで、家じゅうを昼間のように明るくする必要がなくなり、自然と照明のために使う電力を抑えることができます。

省エネはまんべんなく考えることがポイント

「エネルギーを使わない工夫」は、省エネ住宅の仕様イメージからついつい暖冷房にかかる費用にばかり目が行きがちですが、これまでご紹介したように、エネルギーを多く使うものから優先的に検討していくのが合理的と考えます。

高断熱を極めた住宅を求めるあまり、窓が小さな密閉されたような住まいづくりをたまに見かけます。しかし、自然光を取り込んだポカポカしたぬくもりや、開放感のある住み心地を犠牲にしてまで減らした暖冷房費は、実は他の工夫であっさりと充当できるものであったりするかもしれません。

単に数値による性能だけでなく、エネルギーの効率を考えたプランニングや機器選びなどトータルな視点が、エネルギーを使わない工夫には必要と、私たちは考えます。