スタッフコラム

京都で家を建てる(23)「小さな家」の間取りを考えてみる

家は広ければよいという固定概念

前回のブログでは、京都のまち中において家づくりをする際の選択肢として考えられる「小さな家」。そのメリットだけでなく、デメリットについても紹介しました。住まいは、そこで暮らす方のライフスタイルに適したものにするのが原則ですから、「小さな家」がすべての方にマッチするものではないと思います。また、おすすめできるものでもないと考えています。

「小さな家」は無条件に敬遠されがちです。かつて、「日本人はウサギ小屋(のように小さな家)に住んで、毎日あくせく働いている」と海外から揶揄されていたことがありました。そのようなことから、「小さな家に住むと馬鹿にされる」というイメージがついたのかもしれません。また、いまでも家の大きさが、そこに住む人の財力や社会的地位のバロメーターと考えている方が、少なからずおられるのも事実です。

しかし、そのような固定概念だけで「家は広ければ広いほど良い」と、もし思われているようであれば、いちど立ち止まって「小さな家」を考えてみることをおすすめします。

今回のブログでは、小さな家をつくるにあたって限られた敷地をどのように使うか、考えるかについてご紹介したいと思います。

03やすらぎの家_和室

小さな家には特有の考え方がある

小さな家を作ろうと考えたとき、まず最初にやらなければならないことは「世間一般が考える家づくり」からいったん離れてみることです。いわゆる、リビング、キッチン、バス、洗面所、寝室、子ども部屋、クローゼット、玄関といった「パーツ」を組み合わせていくという考え方です。ハウスメーカーのカタログや不動産の折込チラシに掲載されている間取りは、ほとんどがこの考え方で描かれています。

敷地に十分なゆとりがあれば、この考え方で家づくりをしても何の問題もありません。しかし、限られた敷地でこの発想をすれば、たちまち敷地にギュウギュウとパーツ詰め込んだ、なんとも窮屈な住みづらい家ができあがってしまうのです。

「では、何かをガマンしないといけないのか?」「不便を受け入れないといけないのか?」となると、必ずしもそうではありません。大切なのは、「本当にそのスペースが必要か?」「その広さがないといけないのか?」について、検討してみることです。

ひとつの物差しとして、「使用時間」を考えてみてはいかがでしょうか。例えば洗面所スペース。1日のうちでどのくらい使われているでしょう。仮に、ほんのわずかな時間しか使われていないとすれば、節約できる無駄なスペースの候補に上げることができるかもしれません。さすがに洗面ボウルは必要ですが、洗面所のスペースは、バスルームと兼ねたり、廊下の一角に設けたりすることで節約することができます。

また、玄関も同様です。古い家づくりの考え方では、玄関は「家の顔」であるとされ、広く立派につくり、ときには調度品を飾ったりしたものです。しかし、現実的には、靴を脱ぎ履きするわずかな時間しか玄関には滞在しません。あまりにももったいないスペースの使い方です。

さらに、使用時間はそこそこ長いかもしれませんが、大きくて場所をとるシステムキッチンについても再考の余地があるかもしれません。カウンターだけの小さな割烹店を訪れて、小さなスペースで次々とお料理がつくられる様子をみていると、調理をするのに大きなシステムキッチンが必要かどうか疑問に思えてしまいます。また、往々にしてシステムキッチンは存在感があるため、視覚的に窮屈さを感じてしまうのも否めません。

このように、「あって当たり前」からいちど離れることで、空間の使い方への考えが変わってくるかもしれません。

日本の住宅の特徴である「ゆるやかな空間」

さらに、日本の住宅が欧米のそれと異なるのが、「用途を限定しないゆるやかな空間」があることです。象徴的なのは畳の間だといえます。かつての畳の間は、日中はリビングであり、食事のときはダイニングになり、ちゃぶ台を片付けて布団を敷けば寝室になりました。現在でも、昼間は子どもの遊び場や、休日のゴロゴロするスペースに、また、夜は家族で「川の字」で寝る寝室として、畳の間を求めるお客様がいらっしゃいます。空間を時間帯や目的によって複数に使い分けることができれば、スペースの効率は何倍にもなります。

同様に、縁側や、最近の家づくりで人気のある土間空間も「ゆるやかな空間」と言えるでしょう。縁側は居間の拡張部分として使えますし、また、内と外とをゆるやかにつなぐ中間領域にもなります。土間もまた同様です。日本人の心のどこかに「ゆるやかな空間」を欲するDNAがあるのかもしれません。

ゆるやかな空間をさらに拡張するために、決して広くはない敷地に対して、あえてゆとりを持たせて家を建てるという考え方もあります。敷地いっぱいに家をたてるのではなく、アウトリビング的なスペースや小さな庭を設けることで、余白の持つ豊かさを楽しもうという考え方です。聞くだけではリアリティが無さそうな家づくりですが、実際に目にすると「ゆるやかな空間」を欲するDNAに意外と刺さるものです。

私たちと「小さな家」を考えてみませんか

このように、世間一般が考える家づくりからいったん離れて小さな家づくりを考え出すと、逆にさまざまな可能性が広がってくるから不思議なものです。ご自身が本当に欲しい家、実現したい暮らしを考えたときに、ここで紹介したような空間の考え方に共感いただけるようであれば、ぜひ私たちと一緒に家づくりをされることをお勧めしたいと考えます。

次回のブログも「小さな家」シリーズの3回目として、小さな家をより豊かに楽しむ家づくりのアイデアをいくつかご紹介したいと思います。