スタッフコラム

京都で家を建てる(22)京都での家づくりは「小さな家」も検討してみる

京都の家づくりは敷地の面積や地価がネック

このブログで、これまでも何度か触れましたが、京都市で家を建てる時にまず最初の、そして最大の関門になるのが「土地の問題」です。

土地を購入しての家づくりを考える方にとっては、その価格がネックになります。2021年の京都市の基準地価は坪あたりおよそ153万円。新型コロナウイルスの感染拡大により、それまで上昇傾向を示していた地価は2020年、2021年と下落しました。しかし、その下落幅はわずかで、また、次第に鈍化しつつあります。広い土地を購入できるのは、一部の方に限られることになりそうです。

一方、親から相続した土地で家づくりをしたり、親の住んでいる家を建て替えて二世帯住宅を考えるにも、私の中心部ともなると元々の敷地がそれほど広くなく、また左右両隣が近接しているため、ゆとりのある家づくりは難しく、なんらかの工夫が必要となってきます。

とはいえ、まちなかで暮らす利便性や、生まれ育った地域で住み継ぐ心地よさは捨て難いもの。そこで必要になってくるのが、「限られた敷地で快適に暮らせる」家づくりの工夫です。以前にも「狭小地のメリットと課題」や「狭小地での家づくりの留意点」として、限られた敷地での家づくりのポイントについてご紹介しましたが、今回は、プランの考え方についてなど、より具体的な「小さな家づくり」を、3回に分けてご紹介したいと思います。

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「小さな家」にはメリットだけでなくデメリットもある

最初にお断りするのが、「小さな家」が全ての方にとって正解とはいえないということです。暮らす方の家族構成や将来構想、ライフスタイルによっては、ある程度の広さをもつ家に暮らす方が便利で快適な場合もあります。そこで今回は、「小さな家づくり」のメリットとデメリットをそれぞれピックアップし、比較したいと思います。みなさまの暮らしにとってどちらが当てはまるか検討してみてください。

◯「小さな家」のメリット

1)建築費用やメンテナンス費用を抑えられる
建物が小さければ建築費用は安くなり、また敷地も狭くてよいので、土地取得費用も抑えられることはイメージしやすいでしょう。新築時には気が付きにくいのが、築数十年後のメンテナンス費用。内外壁や屋根のメンテナンス費は面積に比例しますから、表面積の小さな家のほうが費用は抑えられます。

2)固定資産税などを抑えられる
土地や家屋を所有していると、「固定資産税」や「都市計画税」を毎年支払う義務が発生します。税額は固定資産の価格を基に算定されますから、土地や家屋の課税標準額が低ければ、それに比例して税額も低くなります。

3)家事が楽
家全体がコンパクトですから、家事のために行ったり来たりする移動距離が少なくて済みます。また、掃除に要する手間も少なくて済むのもご想像できるかと思います。特に、高齢になった時に、移動距離が短かったり、掃除が簡単に済むのはとても助かります。

4)光熱費も抑えられる
家全体がコンパクトになれば気積(室内の体積)が小さくなるため、部屋をすぐに暖める、あるいは冷やすことができます。また、冷暖房設備もコンパクトで良いため、消費するエネルギーが少なく、光熱費を抑えることができます。

5)無駄なものを買わなくなる
室内のスペースが限られますから、物を買う時には衝動買いはせず、ジックリと吟味し、本当に必要な物だけを買うようになります。それにより、無駄な支出を防ぐことにもなります。

×「小さな家」のデメリット

1)多くの人を迎えにくい
人によっては、休日ごとに友達が家に集まったり、両親や兄弟が頻繁に訪ねてくる場合があります。また、家族以外の方が泊まるなどの場合も。そのような時、小さな家はどうしても広さ的な制限が生じてしまいますから、窮屈を感じさせてしまうことは否めません。

2)家族間のプライバシーを守りにくことも
お子さんが小さな時は、小さな家は家族間の距離を近づけ、なかよく暮らすことができます。しかし、お子さんが思春期になると、個室を欲しがったりすることも考えられます。そのようなことを想定するとなると、どうしても相応のスペースを確保しておく必要があります。

3)家具の選択肢が限られる
せっかく気に入ったデザインのソファやテーブルを見つけても、置いた時の圧迫感などが考えられるため、購入をあきらめざるを得ないことがあるかもしれません。あらかじめサイズを限定した中から家具を選ぶことになります。

4)収納が少ない
小さい家ではどうしても居住スペースを優先して考えることになります。そのため、収納スペースは後回しになりがちで、十分な広さも望めません。

5)設計が難しい
住宅の設計は、敷地にゆとりがあるほど簡単といえます。教科書に忠実な設計ができるからです。逆に小さな家の設計は、居住空間の考え方はもちろん、採光や通風、プライバシーの保護のことなどさまざまな課題を解決する必要があります。

「小さな家」は特殊な家?

いかがでしょうか。小さな家にはメリットもデメリットもあることが、おわかりいただけたかと思います。また、家づくりの初期に総合住宅展示場のモデルハウスを見学してしまうと、小さな家は「特殊な家」と思えてくるかもしれません。

しかし、ある一定の層の方にとっては、予算にゆとりをもたせてコンパクトな家をうまく仕上げる方が、現実的な家づくりといえることもあります。次回のブログでは、小さいながら快適に暮らせる家づくりの工夫についてご紹介します。