スタッフコラム

京都で家を建てる(20)二世帯住宅を考える〈プラン編〉

二世帯住宅のニーズは増えている

当社においては近年、二世帯住宅のご相談を受ける機会が多くなってきました。5年ごとに実施している国土交通省の「住生活総合調査」における質問項目「家を住み替える理由」においても、「家族等との同居・隣居・近居」を理由に上げる方が2008年は5.3%、2013年は10.6%、2018年は10.8%と年々増えていることから考えると、二世帯住宅のニーズの高まりは全国的な傾向といえるかもしれません。

増加傾向の理由のひとつとして、大規模な自然災害をきっかけにした「家族のきずな」への意識があげられると言われています。それ以外にも、世帯収入が横ばいで将来の見通せない現況において、土地を新たに購入して新築するより、親が所有している土地で建て替えや建物をリフォームして、住宅取得のコストを抑えよう考える方が多くなってきていること。また、専業主婦が減り共働き世帯が年々増える中、家事や子育てを両親に手伝ってもらうなどの理由から、二世帯住宅を考える方もまた多くなってきました。

二世帯住宅イメージ

二世帯住宅づくりはメリットとデメリットを冷静に考えてから

このように書くと二世帯住宅にはたくさんのメリットがあるように思われますが、同時に二つの世帯が近接して暮らすことによるストレスなどのデメリットがあることも知った上で計画をすることが大切です。今回と次回のコラムでは、2回に分けて二世帯住宅のメリットとデメリットを知った上で、失敗しない二世帯住宅づくりについてご紹介します。今回のコラムでは主にプランづくりについて、そして次回は税金や相続などにおいて気をつけるべき点をご紹介します。

まずはプランについて。二世帯住宅のプランは、大きく分けると「完全分離型」「完全共用型」「部分共用型」の3タイプがあります。

【完全分離型】
各々の世帯が完全に分離した二世帯住宅。居室や水まわりはもちろん、玄関も別々に設けます。建物の内部がつながっていて両世帯が往来ができる場合と、そうでない場合があります。
【完全共用型】
寝室などプライベートな空間のみが別れており、玄関や水まわり、リビングルームなどを共有するタイプの二世帯住宅です。
【部分共用型】
玄関やキッチンは別々に設けるがリビングルームは共有するなど、住まいの一部だけを共有するタイプの二世帯住宅です。

いずれのプランにしても、完全に別々の2棟を新築するより、二世帯住宅1棟を建てる方が敷地を有効に活用でき、建築コストは安くなります。また、その中でも「完全分離型>部分共用型>完全共用型」の順にコストが安くなるのは想像できるかと思います。完全共有型は、キッチンや浴室、洗面台などが単世帯と同様に1ヶ所で足りるのですが、完全分離型になるとこれを2つずつ設けることになります。また、単に機器の数量だけでなく、設置するスペースも単純に倍になります。つまり、リーズナブルに二世帯住宅を建てようと考えると、まずは完全共有型を検討することになります。

また、二世帯住宅にすることにより、一般的には光熱費も下がると言われます。これは、分離型であろうと共有型であろうとあまり変わらず、2つの世帯が完全に別々の場合を合算した時に比べて、2〜3割はダウンすると言われています。

そして、生活でのメリットとしては、先にも触れた家事や子育てを両親に手伝ってもらえるという子世帯のメリット、また、年老いた時に世話をみてもらえるという親世帯のメリットの互助関係があります。

ストレスを抱えずに暮らせる二世帯住宅のために

その一方で、お互いのストレスの感じ方は、二つの世帯の距離感が近いほど、より高まると言ってよいでしょう。つまり、分離型より共用型の方がよりストレスを感じます。

二世帯住宅におけるストレスの主な要因のひとつが「キッチンの共用」と言われています。調理の手順や器具の配置、片付けや掃除などに各々のやり方がある二世帯が一つのキッチンを使うわけですから、お互いのやり方に不満を持たないはずがありません。親世帯が夫の両親なのか妻の両親なのかにもよりますが、前者の場合は特に、たとえ共用型であってもキッチンを2ヶ所に設けることをおすすめします。

また、完全分離型だからストレスの問題は大丈夫というわけではありません。キッチンの問題と同様によくあるのが「音」の問題です。高齢者は比較的早く就寝します。そのため、眠りに入った頃に子世帯の音が寝室に響くのは、つらいものです。これについては、暮らし方よりもプラン段階で解決しておくことが必要です。「親世帯の寝室の上階には子どもが走り回るようなリビングを配置しない」「浴室やトイレの水音が届かないようにする」といった配慮です。

さらに、「介護」についての想定も大切です。どんな人でも介護の必要な時がいつかは来ます。それを考えた家なのかそうでないかも、ストレスに大きく関わってきます。介護施設に通って食事やリハビリ、レクリエーションなどを受ける「通所サービス」、あるいは、自宅に来てもらい、食事や入浴、掃除などを手伝ってもらう「訪問サービス」などを受けやすい動線の確保や、車椅子での移動を想定したバリアフリー化を考えておくことが必要です。さらに、「介護ベッド」を置くスペースをあらかじめ想定しておくことが、快適に介護を行う、あるいは介護サービスを受けるにあたってのポイントといえます。

二世帯住宅は長い視点で考えることが大切

さて、ストレス以外にも二世帯住宅の意外なデメリットが、「家族の変化に対応するのが難しい」ということがあります。二世帯住宅を新築する時は、その時点の家族構成に最適化したプランで建築します。ところがその後、親世帯の老化が進んで完全分離型での生活が難しくなる、あるいは親世帯がどちらも亡くなって「空き家」になってしまったなどの問題がのちのち発生します。

完全分離型であれば、空き家になった親世帯部分を賃貸にすることも考えられます。しかし、そのすぐ上階には子世帯の住居があるわけですから、よほど利便性の高いエリアでなければ借り手は見つからないことが考えられます。そのため、将来的に賃貸にすることを想定して、あらかじめ「貸しやすい」二世帯住宅にしておくことが考えられます。具体的には、二世帯を「上下分離」ではなく「左右分離」にしておくことです。これにより、メゾネットタイプの賃貸住宅として活用し、賃貸収入を得ることができます。

ただし、これも賃貸住宅に対してある程度のニーズが見込まれるエリアでの話となります。交通の便があまり良くないなどニーズが見込めないエリアでは、リフォームして単世帯住宅にすることにより、空き家であった部分を活用することになります。その点で、中藏が採用している「耐震構法SE構法」は、建物の骨格と内部の間取りとが分離しているいるため、二世帯住宅から単世帯住宅への内部の変更が容易です。いずれにしても、二世帯住宅を建てる際には、20〜30年後までの自分たちの暮らしの想定をベースに考える必要があります。

お金のことで思わぬ落とし穴もある二世帯住宅

ここまで、二世帯住宅を考えるにあたってのプランの視点についてお伝えしてきました。そして、二世帯住宅を考える時にもうひとつ気をつけなければならないのが、税金や相続、また売却などの「お金」のこと。思わぬ落とし穴にはまってしまわないための注意点について次回は〈お金編〉としてご紹介します。