スタッフコラム

京都で家を建てる(11)狭小地での家づくりの留意点

前回のコラムでは、狭小地とその家づくりについてご紹介しました。狭小地で家を建てる場合、少なくとも2面、場合によっては3面と、さらには道路を挟んでもう1面が、他の建物に隣接することになります。今回はそのような立地環境における家づくりの留意点について、もう少し具体的にご紹介したいと思います。

狭小地住宅の事例

お隣と近いことによる「音」の問題

自分たちにとっては心地よい音楽も、お隣にとっては騒音でしかありません。家同士が近接した環境では、周囲に音が漏れないような工夫が必要です。例えば、音楽鑑賞や楽器演奏などが趣味でそれなりの音を楽しみたい方は「地下室」を検討されてみてはいかがでしょうか? 地下室は地上の部屋に比べて防音効果をもたせることが容易です。また、地下室(半地下室含む)は、その建築物の床面積の合計の3分の1までは容積率の計算のもととなる延床面積に算入されない(地階部分の不算入)ため、狭小敷地でより広いスペースを得られるというメリットもあります。

音楽だけでなく、日常の会話がお隣に筒抜けになるのも困ったもの。そのため、リビングルームの位置や窓の配置をお隣のそれと近接しないようにするプランが大切です。さらに「音の問題」でよくあるのがエアコン室外機の置き場所。隣家のリビングや寝室に近いとどうしても音が伝わってしまい、トラブルの原因になることも。一方、隣家の室外機の近くに自邸の寝室を設けてしまうと夜通し騒音に悩まされ、そのストレスで場合によっては体調不良を引き起こす恐れがあります。プランにあたっては、しっかりとした現地調査が重要と言えます。

光も風も欲しい、でもプライバシーは守りたい

外の光や風を室内に取り込むためには開口部を設ける必要があります。しかし、「窓を開けたら隣の人と目が合った」みたいことは避けたいもの。そこまでいかなくても、道路を挟んだ向かいのマンションからリビングが丸見えといったお宅はたくさん見かけます。これでは落ち着いて暮らすことは望めませんね。

狭小住宅づくりに手慣れた設計士なら、このような時に提案するのが「中庭」や「インナーバルコニー」です。外部からの視線を遮りながら、太陽の明るさや心地よい外気を取り入れ、また掃き出し窓を中庭に向けることで、中庭をウチとソトとの中間的なゾーンとして日々の暮らしに活用することができます。逆に、それ以外の外部に向けた窓は「縦すべり出し窓」や「横すべり出し窓」などにすることで、採光や通風を得ながら外部の視線は遮ることができます。また、細いタイプのすべり出し窓は人が通り抜けることができないため、防犯面での効果もあります。さらに、採光に関しては「天窓」も効果的です。
狭小地の住宅事例

狭さを感じさせない工夫も大切

狭い敷地で快適な家づくりをするコツは、「無駄を省くこと」と「狭さを感じさせない工夫をすること」です。

「無駄を省く」とは、無駄なスペースを作らないことです。たとえば、玄関ホールや廊下の使用時間は暮らし全体の中でごくわずか。そのためだけの空間は無くすか、あるいはできるだけ小さくして、その代わりにリビングなどを広くするなどのプランをすべきです。

また、むやみに「収納スペース」を設けるのも考えもの。新居への転居を機に持ち物を見直し、必要なものだけを持ち込むことを考えましょう。また、その際に大きさや量を計っておき、それに応じた収納スペースを作ってもらうことで、持ち物がすっきりと収まります。さらに、食器棚やタンスなどの家具もこのタイミングで処分してはいかがでしょうか。これらを持ち込むことによりどうしても空間は狭くなってしまいます。また、置き場所によっては採光や通風を妨げてしまうことにもなってしまいます。食器棚やタンスの代わりになるのが造作の収納。間仕切りを兼ねたりや壁面の厚みなどを利用して造作するため、空間の利用効率が良いほか、見た目にもスッキリとした収まりになります。

一方、「狭さを感じさせない工夫」とは、絵画における遠近法のような視覚的な奥行きや、「視線の抜け」と呼ばれる広がり感を空間に持たせることです。例えば、リビングルームの上方を吹き抜けにしてその上部に窓(ハイサイドライト)を設けたり、部屋のコーナーに窓を配置して外の景色が見えるようにするなどが考えられます。また、採光や通風のために設けた中庭は、このような時も効果的に機能してくれます。

狭小地だからこそ強固な家にする

「小さな家だから強度はそこそこで大丈夫」と考えてしまいそうですが、実際はその逆です。狭小地で居住区間を増やそうとすると、2階、3階と上方へ延びていくしか方法はありません。そのため、小さな底面積で背の高い建物を支えることになります。したがって、基礎を含めた家全体を強固にしておかなければ地震時に倒壊や1階部分の損壊のリスクがあるのです。

そのような点において、中藏が採用しているSE構法は建物全体を太い集成材の柱と梁で支えるラーメン構法のため上からの荷重に強く、狭小地の建築に適した構法と言えます。また、一般の木造建築に比べてフロア内の耐力壁(建物を支える壁)を少なくできるため、視線が壁で遮られることなくフロアが広く感じられるのも特徴と言えます。

以上のように、狭小地には狭小地特有の家づくりの設計手法や工夫が必要となってきます。また、ひとえに狭小地と言っても立地条件などは全て異なりますから、狭小住宅こそ一点ものである注文住宅の特性が生かされる建築と言えるかもしれません。中藏は、このような狭小地での家づくりを数多くこなすことで、さまざまなご提案の「引き出し」を備えています。これから京都のまち中での家づくりをご検討の方は、ぜひ中藏にご相談ください。