スタッフコラム

京都で家を建てる(7)景観政策のことを知っておこう

古都の風情を守ることで、国内外から訪れる人を魅了する京都。その街並みの美しさを未来に継承していくために景観に対する規制があることは、京都に住まれている方であれば多くの方がご存知かと思います。有名なところでは、コンビニエンスストアや外食チェーンの屋外看板のデザインが他の都市とは異なり、赤や黄色といった目立つ色の面積を抑えた「地味め」のものになっていることなどです。

景観政策に従った新築住宅例

京都市の景観政策

コンビニなどの看板が地味めの理由は、「市内の全域で屋外広告物に対する基準を定めるとともに、優良な屋外広告物に対する支援制度を設け、美しい品格のある都市景観の形成を図る」という、京都市の景観政策の「5つの柱」のひとつによるものです。5つの柱では、屋外広告物以外にも下記について基準を定めています。

建物の高さ

市街地のほぼ全域を6段階に種別し、それぞれ10m,12m,15m,20m,25m,31mに建物の高さを規制しています。京都盆地の都心部から東・西・北の三方の山すそに行くに従って次第に建物の高さが低くなることが基本になっています。

建物等のデザイン

市街地のほぼ全域を、風致地区や景観地区、建造物修景地区いずれかに指定し、地区ごとに建物の形態意匠に関する制限が設けられています。さらに、「景観地区」「建造物修景地区」は細分化され、それぞれの地域の景観の特性を反映できるデザイン基準が定められています。主には建物の外観についてですが、屋根や軒・ひさし、外壁などの素材や色について細かなルールがあります。
ビルなどの大きな建築物だけでなく、個人の住宅を建築する際にも、それぞれの地区で定められてルールに従わなければなりません。

眺望景観や借景

「借景(しゃっけい)」は聞き慣れない言葉かもしれません。遠くの山などの景色を、その庭の一部であるかのように利用するという、造園の技術からきています。眺望も借景も、ぱっと観たときのながめです。その中に視線を遮るような高さの建築物を作ったり、眺めをぶち壊したりするようなデザインの建築物を建てないようにしましょうということです。

歴史的な町並み

京都の伝統的な建築様式と生活文化を伝える京町家は,歴史都市・京都の景観の基盤を構成するものです。伝統的な建造物の外観の修理・修景などに対する助成を行い,歴史的町並みの保全・再生が図られています。京町家を長く残すための耐震診断や耐震改修には助成もおこなれています。

これからも京都の町並み景観を守っていくために

京都の街なかで住宅を建てようとすると、必然的に「和」を感じさせるデザインにしなければなりません。真っ白で四角なシンプルモダン風や、ピンクの外壁のメルヘン風の家づくりはできないのです。もしかしたら「自分のお金で建てる家なのだから、自分の好きなようにしたい」とおっしゃる方がいるかもしれません。しかし、多くの人が住みたいと感じるこの京都の街並みは、景観に対するルールをみんなが守ることで保たれているのを忘れてはならないと私たちは考えます。
中藏は京町家の町並みを未来に残していくため、改修やリノベーションに数多く携わっています。また、これらによって得られた伝統的な京町家の意匠に関する知識や技術を新築の住宅に活かすことで、京都の街並みにふさわしい家づくりに努力し、美しい町並み景観を守っていきたいと考えます。